いずれは人参

【いずれは人参】〜「いずれは」の幕開け(2)〜 二代目跡継ぎ失敗談。

 

「いずれは」の幕開け(2)。

 

そんな日を繰り返すうちに、仕事はどんどん忙しくなっていった。交通安全週間などで検問が増え、「飲酒運転」で検挙される件数が増えた事もあったが、「酒飲んで運転してやったぜ!捕まったぜ!」と、飲酒運転で検挙されたのをまるで「武勇伝」のように語るお花畑野郎のお蔭か、とにかく口コミで広がったんだろう。

そうなればもちろん、電話の数も増える。以前はレンタルビデオ観たり漫画読んだりと適当にやっていた電話番仕事も、件数が増えてくると「待ち時間」の計算をしなければいけなくなった。例えば、

 

今夜動いている車が3台。

A車は〇町まで行き、終わるのが15分ぐらい。

B車は△町まで行き、終わるのが20分ぐらい。

C車は□町まで行き、終わるのが30分ぐらい。

現状、空いている車は無し。

 

この時点で依頼が1件入れば、A車が終わる時間と、そこから依頼された飲食店まで向かい到着する時間を計算し、「

 

「お時間(A車終わる時間があと15分+飲食店まで向かう時間〇〇分)お待ちいただけますか?」

 

となる。さらに5分後もう一件依頼が入れば

 

「お時間(B車終わる時間があと15(20―5)分+飲食店まで向かう時間〇〇分)お待ちいただけますか?」

 

だ。「ただ電話を受けるだけ」だったはずの「仕事」が、これでは「話が違う」だ。しかも、伝えた待ち時間に車がつかなければ、依頼先から「催促」の電話が入る。これがまた「最悪」なのだ。

 

「おい!いつになったら来るんだ!蕎麦屋の出前じゃねーんだよ!」

 

とか、

 

「待たせた分安くなるんだろうな!この時間、どう保障してくれんだよ!」

 

とか。知識が乏しいのか「おれ」の中で「待たせる=蕎麦屋の出前」という認識が全く理解できず、「こいつ酔っぱらって頭イッってんな」と思いながらも、しかし、とにかく「すみません。もう着きますので」とひたすら謝るしかない。

 

でもね。「おれ」は14歳だ。そう、この状況をいつまでも我慢できるはずがなく、仕事中ちょいちょい現れる「おれ」の天敵(よりみちのママ)から受ける「モンスターあなた」のストレス蓄積と、酒が入っているせいか、近くに女(ホステスなど)がいるせいか、必要以上にいきり立つ客の暴言に「ドプッツン(キレる)」ぶっこいて、ある日客とドゲンカ(喧嘩)した。

 

 

お客様=「ばっかやろう!さっきから「もう着くもう着く」って、全然車来ないじゃないか!」

おれ=「すみません。もう着くはずな、、、」

お客様=「今すぐ車をよこせ!てめーぶっ殺すぞ!」

おれ=「・・・・・」

お客様「おいてめー!聞いてんのか!こら!」

 

(ドプッツンでござる!)

 

おれ=「っせーんだよクソジジイ!黙っておとなしく待ってやがれ酔っ払いが!がっちゃーん!(←電話切る音)」

 

 

ってね。出ちゃうよ誰だってマジで。「おれ」は悪くない。だって14歳だもん。

 

まぁ、この後「おやじ」が謝りにいったりと色々大変だったみたいだが、とりあえずこの件は片付いたんだ。ただ、「おれ」はおれでその日は腹がたって眠れないどころか、数日間腹の虫が治まらなった。このままでは精神衛生上良くないし、ストレスも溜まるし、自分の時間も取れない。だからこれを機に「もう電話番やらんわ」と言ったのだが、

 

「わかった、一晩1500円出す。【いずれ】もっと仕事が増えれば、もっと金やるから。」

と言う「おやじ」の言葉にまんまと乗っかり、結局続ける事になった。

そしてコレが、最初の【いずれ】であった。

そして「おれ」は、まんまと乗っかった。

そして金は、結局一晩1500円以上もらえる事は一度もなかった。

 

~~倍速進行~~

 

時は経ち、「おれ」は16歳になった。ルンルンの高校一年生だ。この頃、「電話番」は相変わらず続けていた。というより「やらされて」いたが、当然、順風満帆に経過したはずもなく、「客」や「おやじ」と喧嘩する事が多々あったが、一つ一つ挙げていくとキリがないのでココは割愛する。

 

さて、高校生ともなれば「門限」も長くなり、夜遅くまで遊び歩く事や、週末ツレ(友達)の家に泊まりに行ったりするわけだ。中学の頃から「電話番」の日以外は遊びまくっていた「おれ」は、「高校生」という中学生からのレベルアップによって、遊びに拍車がかかった。当然、夜は家にいるハズがない。そして「おれ」は、電話番から逃げるようになった。

 

幸いにも、昔やんちゃだった「おやじ」は、「おれ」の行動に一定の理解があった。「まぁ、年頃だし仕方ないな」と、「電話番」の件については諦めていた。というより、仕事もかなり増え、高校生が片手間でできるような仕事ではなくなっていた事もあったからだろう。「電話番」をやらなくなった分当然小遣いは減ったが、「週末の自由」を手に入れた「おれ」は、しばらく青春を謳歌した。

 

続く。

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