舞台となる会社
株式会社 一番興商
主たる業
運転代行業
一般乗用旅客自動車運送事業(タクシー)
一般貸切旅客自動車運送事業(バス)
主な登場人物
・代表取締役 社長=おやじ(以下、「おやじ」という)
・取締役 経理部長=おふくろ(以下、「おふくろ」という)
・専務取締役=えのかぷ(ちぼに)(以下、「おれ」という)
・管理部長=ぬべ(創業当初から社長の右腕)(以下、「ぬべ」という)
その他、ちらほら。
※登場する人物の一部及び施設等の名称は「仮名」です、。
「序章」
社員A 「また社長フィリピン行ったぜ。」
それはいつもの光景だった。ある日突然「ふっ」といなくなる社長。社員どころか、「おれ」や「幹部」までもが「あれ?社長は?」と思うと大体フィリピンに遊びに行っている。
社長不在の状態に気付いた時には既に数日経過しており、その後約1週間程度でフィリピンから帰ってくる。
そして今日はその「帰ってくる」日。
程よく日焼けして「セブ島」から帰ってきた社長は、良好な顔色とご機嫌な笑顔お満悦な様子。
「ほら、土産」
とドライマンゴーを会社のデスクに置いたその手に光るのは、「金色のロレックス」「金の色ブレスレット」そして、「ピカピカに磨かれた爪」は男のロマンそのものだった。
ロマンの足跡はまだ続く。ドライマンゴーの次に出てきたのは現地で撮影された写真。真ん中の豪華で大きな椅子にゆうゆうと腰かけているのは社長。両脇には現地の女。その周りには同行した各地の会社社長達。
おれ 「くそー羨ましい。俺も【いずれは】こうなるぞ!」
と、約2か月に1度、社長がフィリピン旅行(本人は仕事と言ってるが)に行って帰ってくる度に思ったものだ。
この物語は「いずれはお前は社長だ」「いずれはお前のものになる」「その時が来たらお前の好きなようにやれ。だから今は俺の言う通りに働け。」と、【いずれは】という【人参(男のロマンの塊)】を顔の前にぶら下げられ、その人参食べたさに「20代~30代の黄金期」を全て仕事に費やし捧げてきた結果、やっと手にした「いずれは人参」は「既に腐っていた」というお話です。
続く。