「いずれは」の幕開け(1)。
受注用の電話は1階。「おれ」の部屋は2階。ドアを開けていて自室にいると電話の音が聞こえないから、仕方がないので漫画の本を数冊持って電話の前で待つ事にした。
そして、「なんで「おれ」が」と不貞腐れながら漫画を読んでいると、電話が鳴った。
人生で初めて受ける仕事の電話。ドキドキしながら「電話が鳴ったらこれを読み上げろ」と渡されたメモを手に、意を決して受話器を上げる。
※ママ=スナックよりみち(仮名)のママ
おれ=「はい、ありがとうございます。代行〇〇(自社名)です。」
ママ=「・・・ん?だれ、あなた。」
おれ=「(な、なんだ?!このオバハンいきなり応用かよ。どうすりゃいーんだ)」
ママ=「ちょっと、聞いてるの?」
おれ=「あ、はい。代行〇〇です。(いや、これしかメモに書いてねーし)」
ママ=「あー、あなた新人ね。ちゃんと電話の対応しなさいよあなた。」
おれ=「はぁ、すみません。」
ママ=「あなたちゃんとしなさい。1台ね!すぐよこしてね!」
ガチャン。(電話切れる音)
おれ=「・・・。」
「っだよ!今の!はぁ?!ふざけんなよクソば(ぴー)あ!つか、どんだけあなた言うんだよモンスターあなたかよ!」
というのが、最初受付の感想でした。その後、その店に行ったのがタイミング良くか悪くか「おやじ」と「おふくろ」のペアで、なんでもその店のママに「なんなのあんたの所の電話番は」とこっ酷く小言言われたそうです。
ちなみに、この時のエピソードは「おれ」が下積み時代の時から専務取締役になるまで、いや、なった後も「社員教育」の話になると「あんた最初の電話でよりみちのママに叱られたっけねー」とよくネタにされたのを覚えている。
さて、結局この日は「この一軒」の受注で終わった。ただ怒られただけで「おれ」には一円も入らず何とも胸糞悪い終わり方だったわけだが、「やれやれチクショー。何だっただよあのクソば(ぴー)は二度とやんねー」と決めるも、「電話番」の手伝いはこれで終わらなかった。
よりみちのママに怒られたものの、とりあえず電話番として機能した「おれ」は、「週末混雑時の電話番」として期待される事になった。
だが、当然「おれ」は断った。「あの胸糞悪い思いをまたしなければならないとか、冗談じゃねーよ。金くれたってやらねーな。」とひたすら首を横に振り続けたが
「わかった。じゃ一晩1,000円」と言われ、
「まじで?!」
と、アッサリ承諾。
当時、月のお小遣いは3,000だったので、週末の金・土二日間で2,000円。月4週で8,000円を得られるとなれば釣られるも当然。
「おれ」はよりみちのママに怒られた一件がひっかかったが、毎週末22:00~1:00の間で、受注が重なって全員仕事に出た後に限って「電話番」をやる事になった。
いやー、当時は「金」に目が眩み手伝ってましたが、今こうしてみると時給約330円とか、家業の手伝いとは言え安く使われたもんだ。そもそも「おやじ」の賃金計算の根拠が「仕事量=対価」ではなく、「14歳=歳相応の小遣い」というからブラックである。
続く。